異時共同不法行為になる交通事故
1 異時共同不法行為とは
⑴ 異時共同不法行為とは,簡単にいえば,別の時に発生した二つの不法行為により,一つの結果が生じた場合です。
交通事故の場合,2つ以上の事故の結果が合わさって一つの大きな損害が生じた場合に異時共同不法行為が問題となり得ます。
異時共同不法行為の場合には,それぞれの事故の当事者に対して,その損害について連帯して責任を取って賠償をするように求めることができます。
⑵ 異時共同不法行為となりうる交通事故としては,以下のようなケースが考えられます。
「Xさんが横断歩道を青信号で歩いていたところ,信号無視したYさんの運転する車がXさんにぶつかり,Xさんが怪我をした。Xさんの怪我は事故から数か月程度で治る可能性があったが,怪我が完治する前である治療をはじめた翌日に,全く異なる場所でZさんの運転する車にはねられてしまった。その結果,一つ目の事故の怪我が悪化し,怪我が治るまでに1つ目の事故から1年かかってしまった」
⑶ 例のようなケースでは,Xさんは,誰に対して,どのくらいの賠償を求めていくことができるでしょうか。
Yさんとしては,Zさんが起こした2つ目の事故がなければ,Xさんは数か月程度で怪我が治る可能性があったのだから,それ以降に発生した損害については賠償する責任はないと主張することが考えらます。
Zさんとしては,確かに2つ目の事故でXさんを怪我させてしまったけれども,治療がこんなに長くなったのは,1つ目の事故でYさんがXさんに怪我をさせていたからなのだから,そのことを考慮した賠償しかできないと主張することが考えられます。
Xさんとしては,YさんでもZさんでもいいから,1つ目の事故と2つ目の事故の治療費,被った損害,慰謝料を払ってほしいと考えるでしょう。
⑷ このように,三者間の主張が入り乱れ,誰が,何について,どのくらい賠償すべきなのかを判断するのが非常に困難な事態が生じます。
これを当事者のみで解決するのは非常に困難です。
2 異時共同不法行為になりうる事故において注意すべきこと
⑴ 異時共同不法行為になりうる事故は,上述のとおり,非常に複雑な事件になります。
これを避ける目的で1つ目の事故を担当する保険会社の担当者と2つ目の事故を担当する保険会社の担当者とで話をし,2つ目の事故以降は,2つ目の事故を担当する保険会社のみが対応することも少なくありません。
ただ,中には,話もせずに,示談を迫る担当者もいるようです。
つまり,1つ目の事故を担当するYさんの保険会社は,2つ目に事故が発生してすぐに,「1つ目の事故について示談しましょう。これからの治療については2つ目の事故のZさんの保険会社が担当します」等と言って,示談を持ちかけてくることが考えられます。
しかし,この示談に応じてしまうと,2つ目の事故のZさんの保険会社は「2つ目の事故から生じた損害は,1つ目の事故と競合して発生したものなので,うちではすべての賠償をするわけにはいきません」と言って,低額での示談を求めてくることになります。
⑵ このような事態を避けるため,1つ目の事故の保険会社と示談する場合には,十分注意してください。
保険会社間で話がついていたとしても,事後に問題が生じることもありますので,できる限り,1つ目の事故の保険会社との示談と2つ目の事故の保険会社との示談は,同時に行うことが望ましいです。
異時共同不法行為の場合,どのように示談を進めていくかの判断は非常に難しいです。
当事者だけでの交渉で適切な賠償を受けることは非常に困難ですので,2つ目の事故が発生した段階ですぐに弁護士に相談してください。
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