評価損とは
1 技術上の評価損と取引上の評価損
一般的に評価損とは、交通事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額をいいます。
交通事故に遭った被害車両は、修理すれば完全に元通りになるというものではありません。
修理をしても、技術的な限界から機能や外観が元通りにならない場合があります。
このような場合には、一部が技術的に修理不能のため車両の価値が下落することになり、この価値が下落した分を損害(技術上の評価損)として賠償請求することができます。
他方で、完全に修理ができ車両の機能や外観が元通りになったとしても、事故歴があるために車両の交換価値が下落することもあり、この価値が下落した分も損害(取引上の評価損)として賠償請求することができます。
2 評価損が認められる場合
⑴ 評価損の算定基準
技術上の評価損は、認められ易いですが、取引上の評価損については中古車市場などにおける価値低下が認められる必要があるため、裁判例などでは評価損を一定の場合のみに制限して認めている傾向があります。
具体的には、取引上の評価損は、事故車両の車種、走行距離、初度登録からの期間、損傷の部位・程度(車両の骨格部分か否か)、修理の内容・程度、事故当時の同一車種の時価等諸般の事情を考慮して判断されます。
⑵ 外国車における裁判例の傾向
車両の骨格部分に損傷が及んでいる場合は、外国車であれば自動車そのもののブランド価値が高いことから、初年度から5年以内、走行距離6万キロメートル程度を目安として評価損を認める傾向があります。
たとえば、初度登録から4か月余りで事故に遭ったポルシェカレラ911につき、枢要部分に損傷が及んでいること等を理由として評価損を認めた事案がある一方で、事故までの走行距離約1万9500kmのロータス・エスプリ(高級外国車)について、損傷部位が左後バンパー・フェンダーのみで、修理費は64万7126円にとどまり、初度登録から約6年半経過していることを考慮して評価損は認められないとした事案があります。
⑶ 国産車における裁判例の傾向
国産人気車種についても、上記外国車と同様の基準で評価損が認める傾向があります。
また、一般の国産車であっても、初年度から3年以内、走行距離4万キロメートル程度をひとつの目安として評価損を認めた判例が多数存在しています。
たとえば、初度登録から事故まで23か月ほど経過し、走行距離9938kmのトヨタエスティマについて、本件事故により車体の骨格部分に損傷が及んだこと等を理由として評価損を認めた事案がある一方、初度登録から事故までに約4年2か月が経過している走行距離8万7892kmのホンダアワード(国産車)について、評価損を認めなかった事案があります。
なお、示談段階においては、相手方加入の任意保険会社が評価損を認めることは稀であり、認める場合でも、新車登録後間もない車両だけと主張してくることが多いです。
3 評価損の算定方法
評価損の算定は、事故時の車両時価額と修理後の車両時価額の差額を算定できれば一番ですが、修理後の車両価格を立証することは困難なことが多いです。
修理後の車両価格の立証について、証拠を元に請求をしていくのであれば、日本自動車査定協会が作成する減価証明書を用いることが考えられます。
もっとも、減価証明書の金額が裁判所で採用されることは多くはありません。
評価損自体を否定する裁判例も少なくありませんが、評価損を認める裁判例においては、修理費を基準として評価損が認定している例が多くみられ、おおむね修理費の10パーセントから40パーセントといった評価損を認めています。
4 当法人にご相談ください
交通事故に関してお悩みの方は、一度、当法人の弁護士までご相談いだければ幸いです。
交通事故においては、上記のような評価損を含めて、損害賠償請求においていろいろと難しい問題があり、弁護士を入れないことには、保険会社からしっかりとした補償を受けられないということがあります。
特に、相手方保険会社との関係で話がこじれてしまった後では、弁護士が介入しても適切な補償を受けられなくなってしまう可能性がありますので、保険会社から問題なく物損の件についてお支払いしてもらえる場合は別にして、しっかりと補償を求めていきたいのであれば、早い段階で弁護士にご相談をいただいた方が安全です。
東京近郊にお住まいの方ですと、弁護士法人心 東京法律事務所が便利だと思われます。