学生が交通事故に遭った場合の休業損害
1 休業損害とは
休業損害とは,交通事故によって仕事ができなくなったこと等により減少した収入の賠償を求める際の損害項目です。
会社勤めの方の場合には,事故前3か月の給与を90で割るか,または,事故前3か月の給与を事故前3か月の稼働日数で割って日額を算出し,その日額に休業した日数を乗じて休業損害を算出するのが通常です。
では,アルバイトをしているなど収入がある学生が交通事故に遭った場合,休業損害はどのように算出されるかを以下でみていきましょう。
2 被害者が学生の場合
⑴ 無収入の場合
当然ですが,事故発生前にアルバイトなどをしておらず無収入である場合は,原則として休業損害は認められません。
⑵ アルバイトをしていた場合
- ア 休業日数の算出方法
アルバイトなどで収入があれば休業損害が認められる場合があります。
アルバイトの場合,シフト制であることが多いため,休業日数の把握が難しいことが多いです。
シフト制でも休業日数を容易に確定できる場合は,時給×シフトに入れなかった時間で休業損害は算出されますが,シフトが固定ではなく休業日数が特定できない場合は,損害の算出が難しくなります。
このような場合には,事故前の稼働日数(時間)の平均もとに休業を要した期間も同程度の稼働日数があったはずであるとして,休業日数を算出する方法を選択することになります。
- イ アルバイトをしている学生の休業損害を認めた例
例えば,事故当時アルバイトをしていた大学生(男・20歳)について,大学3年生になったばかりの時期の事故であったとしても,就職活動のために直ちにバイトを自粛しなければならない状況にはなかったこと等を考慮し,事故前日までの102日間のアルバイトでの実収入を基礎として,症状固定まで384日間199万円余の休業損害を認めたケースがあります。
⑶ 就職遅れが生じた場合
- ア 就職先が決まっていた場合
事故前に無収入であったとしても就職の直前に事故に遭ってしまい,就職が遅れたような場合には,得られたはずの給与を得られなかったとの損害が生じているため,その損害を休業損害として請求することができます。
例えば,就職が内定していた修士課程後期在学生(男・事故当時27歳)につき,交通事故により内定が取り消され,症状固定まで就業できなかったとして,就職予定日から症状固定まで2年半余の間,就職内定先からの回答による推定給与を基礎に955万円余の休業損害が認められたケースがあります。
- イ 就職先が決まっていなかった場合
また,内定が決まっていないケースでも休業損害が認められた裁判例があります。
大学生(男・21歳)について,交通事故を原因として留年し,1年半就職遅れが生じたとして,賃金センサス男性大卒20歳から24歳平均を基礎に,就職遅れの期間分479万円余を休業損害として認めたケースです。
3 学生の方で,交通事故の被害を受けてしまった方は
東京にお住いの学生の方で交通事故に遭ってしまった方やそのご家族の方で,休業損害につきしっかりと賠償してもらえるのか心配な方は,弁護士法人心 東京法律事務所までお気軽にご相談ください。
休業損害を獲得できるケースなのかを含め,無料で法律相談に応じさせていただきます。
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