交通事故によるPTSDと後遺障害
1 交通事故の後遺障害認定
交通事故によって心身が受ける衝撃はとても大きいため、中には治療を続けたものの、傷害が完治せず後遺症となってしまう場合があります。
このような場合、残ってしまった後遺症に対する損害賠償請求を行うために、まずは「後遺障害等級」というものを獲得する必要があります。
この後遺障害等級は、損害保険料率算出機構の下部組織である自賠責損害調査事務所が、被害者から提出された後遺障害診断書や画像所見等を参考にして判断します。
この記事では、交通事故の被害に遭った際のショックでPTSDになった場合の後遺障害認定について紹介します。
2 PTSDとは
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、交通事故に伴う強いショック体験が心のダメージとなり、その体験に対して強い恐怖を覚えるストレス障害のことです。
特に、交通事故のように突発的な人災に伴う精神的なダメージの場合は、急性トラウマといわれることがあります。
3 PTSDは非器質性障害
PTSDのような精神的な障害は、非器質性の精神障害と呼ばれています。
非器質性の精神障害とは、脳組織に物理的な損傷がない精神障害のことを言います。
PTSDのほか、うつ病や恐怖症、ノイローゼ、統合失調症などがこれにあたります。
なお、これに対し器質性の精神障害とは、外部からの物理的な力が加わったことによって脳組織が損傷し、身体組織に異常が生じたものを言います。
器質性の精神障害には、高次脳機能障害や身体性機能障害等が挙げられます。
4 非器質性の精神障害が後遺障害として認定される要件
非器質性障害であるPTSDが後遺障害として認定されるには、精神症状と能力に関する判断項目の欠如・低下に、それぞれ1つ以上該当していることが必要となります。
精神症状には、以下のものがあります。
- ①抑うつ状態
- ②不安状態
- ③意欲低下状態
- ④慢性化した幻覚・妄想性の状態
- ⑤記憶または知的能力の障害
- ⑥その他の障害
- また、能力に関する判断項目には、以下のものがあります。
- ①身辺日常生活
- ②仕事、生活に積極性・関心を持つこと
- ③通勤・勤務時間の厳守
- ④ふつうに作業を持続すること
- ⑤他人との意思伝達
- ⑥対人関係・協調性
- ⑦身辺の安全保持
- ⑧困難・失敗への対応
後遺障害の認定基準に該当するかどうかについては、上記のような精神症状や能力の欠如・低下が見られることに加え、交通事故との因果関係、治療状況、症状固定の判断時期等を考慮して判断されることになります。
5 PTSDなどの非器質性の精神障害の後遺障害等級
精神症状と能力項目に関する判断項目に照らして、非器質性障害が認められる場合、その障害の程度に応じて後遺障害の等級が判断されることになります。
非器質性精神障害の場合の後遺障害等級は、その精神障害の程度に応じて、第9級、第12級、第14級の3つに該当する可能性があります。
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