骨粗鬆症を理由とする素因減額
1 骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは,骨の量が減少し,骨密度と骨質から判断される骨強度の低下により,骨が脆弱化して,骨折しやすくなる病態のことをいいます。
骨粗鬆症患者数は,高齢化に伴って増加傾向にあり,日本国内に1000万人以上いるともいわれています。
骨粗鬆症は,女性,特に閉経後の女性に多くみられ,女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
骨粗鬆症になっても,通常,痛みを伴うことはありませんが,転ぶ等のちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。
2 骨粗鬆症と素因減額
交通事故によって骨折した被害者が,事故前から骨粗鬆症を患っていた場合,加害者側から骨粗鬆症を理由とする素因減額を主張されることがあります。
素因減額とは,被害者の既往症によって治療期間が長期化したケース等,交通事故による損害の発生または拡大について被害者自身の素因(おおもとの原因)が影響している場合に,損害賠償額を減額することをいいます。
3 骨粗鬆症を理由として素因減額すべきか
加害者側から素因減額を主張されても,裁判実務上,骨粗鬆症を患っていたことから直ちに素因減額されるわけではありません。
なぜなら,そもそも素因減額は,被害者の素因が単なる身体的特徴にとどまらず「疾患」にあたる場合に損害の公平な分担という観点から減額し得るという考え方が支配的です。
ところが,骨粗鬆症の診断は,若年成人(20歳~44歳)の骨量の平均値(YAM値)との比較によって行われ,YAM値の70%未満であれば骨粗鬆症と判断されます。
そうすると,骨粗鬆症に罹患していると診断されやすい高齢の被害者が素因減額されやすく,公平に反する結果となるからです。
4 骨粗鬆症を理由とする素因減額の判断基準
では,どのような場合に骨粗鬆症を理由とする素因減額が認められるのでしょうか。
いまだ明確な判断基準は示されていませんが,裁判例を眺めてみますと,次の①から③事情を考慮して判断されているといえます。
- ①事故の態様や衝撃の程度
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衝撃が小さいにもかかわらず,骨折した場合は,素因減額される可能性が高くなります。
- ②被害者の発症の時期や程度
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被害者が,事故に遭う前から骨粗鬆症と診断され治療を受けていた場合,素因減額される可能性が高くなります。
- ③被害者の年齢
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高齢者ほど素因減額されにくく,若年者ほど素因減額されやすい傾向がみられます。
また,減額される割合も,若年者ほど高くなる傾向がみられます。
被害者の年齢に照らして著しく不相当に骨密度が減少している場合に減額されやすいといえるでしょう。
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