交通事故の過失割合について弁護士に相談
1 そもそも交通事故における過失割合とは
交通事故に遭った場合,交通事故の発生や被った損害の拡大について,被害者の方にも過失があると,加害者側より,損害賠償額の減額を主張されることがあります。
このように,交通事故被害者の方にも過失があるために損害賠償額が減額されてしまうことを「過失相殺」といい,加害者と被害者の間における過失の比率のことを,「過失割合」といいます。
2 過失割合によって受け取れる損害賠償金額が変わってくる
交通事故被害者の方の過失割合がどの程度かによって,最終的に受け取ることのできる賠償金の額は,大きく変わってきます。
そこで,過失割合が最終的に受け取ることのできる賠償金の額にどこまで大きく影響してくるのかを,具体例を用いてご説明したいと思います。
【具体例】交通事故で負った傷害の治療費として50万円を要し,休業損害が20万円,慰謝料額が80万円であった場合(なお,治療費については相手方保険会社から全額支払い済みと仮定します。)
⑴ 被害者の方の過失割合が0パーセントの場合
総損害額150万円(治療費50万円+休業損害20万円+慰謝料額80万円)の内,相手方保険会社が既に医療機関に支払い済みの治療費50万円を除いた100万円が,被害者の方が最終的に受け取ることのできる賠償金の額となります。
⑵ 被害者の方の過失割合が20パーセントの場合
この場合,総損害額150万円の内,20パーセント(150万円×0.2=30万円)が被害者の方の自己負担部分となります。
そのため,被害者の方が最終的に受け取ることのできる賠償金の額は,150万円-30万円(過失割合部分)-50万円(相手方保険会社の既払分の治療費)=70万円となります。
⑶ 被害者の方の過失割合が50パーセントの場合
この場合,総損害額150万円の内,50パーセント(150万円×0.5=75万円)が被害者の方の自己負担部分となります。
そのため,被害者の方が最終的に受け取ることのできる賠償金の額は,150万円-75万円(過失割合部分)-50万円(相手方保険会社の既払分の治療費)=25万円となります。
⑷ まとめ
以上の検討からも分かるとおり,交通事故被害者の方が最終的に受け取ることのできる賠償金の額は,過失割合の程度によって大きく変わってきます。
3 過失割合の決め方
⑴ 交通事故の過失割合は,主として事故態様によって決定されます。
その上で,速度違反の程度,著しい過失や重大な過失の有無等の各種修正要素を考慮し,具体的な過失割合を決定していくことになります。
⑵ また,具体的な過失割合を決定するにあたっては,実務上,「別冊判例タイムズ38『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(全訂5版)」という書籍を参照することが多くあります(以下,単に「判例タイムズ」と言います)。
もっとも,当然,判例タイムズに掲載されていない事故類型や修正要素もありますし,ケースによっては判例タイムズ記載の過失割合を単純にあてはめるべきではない具体的事情が存在する場合もありますので,注意が必要です。
⑶ 以下では,「交差点における右折車と直進車の事故」を素材として,どのようにして過失割合が決定されるのか,ご説明したいと思います。
ア 直進車・右折車ともに青信号で交差点に進入した場合
判例タイムズによると,このようなケースの基本的な過失割合は,直進車:右折車=20:80となっています。
その上で,修正要素にとなる事実が存在すれば,基本的な過失割合が修正されることになります。
このような事故態様における修正要素の具体例としては以下のようなものが挙げられます。
【直進車に不利な修正の例】
- ・右折車が既に右折をし切っていた(直進車の過失割合に+10の修正)
- ・直進車が時速15キロメートル~時速30キロメートルの速度違反をしていた(直進車の過失割合に+10の修正)
- ・直進車が時速30キロメートル以上の速度違反をしていた(直進車の過失割合に+20の修正)
- ・直進車の運転手が携帯電話を操作しながら運転をしていた(直進車の過失割合に+10の修正)
- ・直進車の運転手が酒に酔っていた(直進車の過失割合に+20の修正)
【直進車に有利な修正の例】
- ・右折車が徐行をしていなかった(直進車の過失割合に-10の修正)
- ・右折車が直進車の至近距離で右折をしてきた(直進車の過失割合に-10の修正)
- ・右折車があらかじめ道路の中央に寄らずに大回りで右折をした(直進車の過失割合に-5の修正)
- ・右折車が右折のウインカーを出していなかった(直進車の過失割合に-10の修正)
- ・右折車の運転手が携帯電話を操作しながら運転をしていた(直進車の過失割合に-10の修正)
イ 直進車・右折車ともに黄信号で交差点に進入した場合
直進車・右折車ともに青信号で交差点に進入した場合と異なり,このようなケースでは,基本的な過失割合は,直進車:右折車=40:60とされています。
各種修正要素による修正がある点は,直進車・右折車ともに青信号で交差点に進入した場合と同様です。
ウ 直進車・右折車ともに赤信号で交差点に進入した場合
このようなケースにおける基本的な過失割合は,直進車:右折車=50:50とされています。
このようなケースでも,直進車・右折車ともに青信号で交差点に進入した場合や,直進車・右折車ともに黄信号で交差点に進入した場合と同様に,修正要素に該当する事実が存在すれば,基本的な過失割合からの修正がなされることになります。
⑷ 上記の具体例からも分かるとおり,過失割合は,基本的に,事故態様を基礎としつつ,修正要素を勘案して決定されることになります。
4 相手方が主張する過失割合に納得がいかない場合
事故態様や過失割合の修正要素の有無に争いがある等の事情により,相手方が主張する過失割合に納得ができないというケースも生じ得ます。
そのような場合は,相手方を説得するに足りる証拠を提示し,自分の言い分が正しいということを主張・立証していく必要があります。
そこで,次の項目では,過失割合を決定するにあたって重要な役割を果たす証拠について,ご説明したいと思います。
5 過失割合に関して証拠となるもの
過失割合に関して証拠となるものとしては,例えば以下のようなものが挙げられます。
- ⑴ 刑事記録
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刑事記録には,事故状況を記した実況見分調書や,信号サイクルに関する資料,飲酒検知の結果,当事者の供述調書など,過失割合を決定するにあたって重要な証拠となる資料が含まれている場合が多くあります。
- ⑵ ドライブレコーダー等の映像資料
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ドライブレコーダーや事故現場付近の防犯カメラの影響等の映像資料は,事故前後の状況に関する客観的な証拠となるものですので,過失割合を決定するにあたって,非常に重要な証拠となります。
- ⑶ 写真
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映像資料がない場合でも,事故直後の状況を撮影した写真や,車両の損傷状況を撮影した写真が存在すると,そこから事故態様を推測できる場合もありますので,交通事故に遭った場合は,その直後の状況を写真に撮って保全しておくことをおすすめいたします。
6 過失割合について弁護士に依頼するメリット
上記のような証拠があったとしても,過失割合に関する主張の食い違いが解消されず,話し合いがまとまらないという場合もあるかと思います。
そのような場合は,示談交渉や裁判を弁護士に依頼をすることをおすすめいたします。
弁護士に依頼をすれば,ご自身で相手方と話をしなくてはならない手間が省けるだけでなく,刑事記録の取り付けも容易に行うことが可能ですし,存在する証拠に基づいた説得的な主張を行っていくことも可能です。
7 過失割合について弁護士に依頼した場合の費用
過失割合に関する交渉や裁判を弁護士に依頼した場合の費用は,事務所ごとに様々です。
弁護士法人心 東京法律事務所にご依頼いただく場合,各保険会社の弁護士費用特約が利用できますので,弁護士費用特約が付いていれば,これにより弁護士費用の負担を0円にすることができたり,大幅に軽減することができたりします。
仮に,利用できる弁護士費用特約がないという場合でも,原則として,ご依頼時にお支払いいただく着手金は0円ですので,最初にまとまったお金がなくてもご依頼しやすい形になっております(弁護士報酬は,回収できた賠償金の中からいただくという後払い方式となっております)。
交通事故に遭ってお困りの方は,お気軽に弁護士法人心 東京法律事務所にご相談ください。
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