学生が後遺障害を負った場合の逸失利益
1 はじめに
交通事故の被害者に後遺障害が残ってしまった場合、仮に被害者に後遺障害が残らなかったとしたら将来被害者が受けることができたであろう利益(これを、「後遺障害逸失利益」と言います。)についての賠償がなされるのが通常です。
後遺障害逸失利益は、「基礎収入×後遺障害により労働能力を喪失した割合×労働能力の喪失が認められる期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で算出されます。
それでは、学生のように、交通事故が発生した時点では収入を得ていない方の後遺障害逸失利益はどのように考えればよいでしょうか。
2 学生が後遺障害を負った場合の逸失利益
交通事故の被害者の方が、交通事故に遭った時点では学生であったために収入が存在しなかったという場合でも、直ちに後遺障害逸失利益の算定における基礎収入が0円として扱われてしまうことにはなりません。
以下では、交通事故の被害者の方が、小学生のような年少者である場合と、大学生で将来の進路も決まっているような場合に場合分けをして検討をしたいと思います。
後遺障害逸失利益は、将来にわたる損害ですので、事故当時収入を得ていなかったからといって、基礎収入を0円として扱うのは不合理な結論となってしまう場合があります。
そのため、交通事故の被害者が年少者である場合は、賃金センサスの「男女別」、あるいは、「男女をあわせた全労働者」・「全年齢」・「学歴計」の平均賃金を基礎収入として、後遺障害逸失利益を算出することが多くあります。
参考リンク:厚生労働省・賃金構造基本統計調査
大学生の方で、既に内定を得ているというような、将来特定の職業に就く可能性が極めて高いという場合は、当該職業に応じた基礎収入を基礎に、後遺障害逸失利益が算定される場合があります。
もっとも、「特定の職業に就く可能性」については、漠然としたものでは足りず、個別の事案における具体的な事情の下、高度の蓋然性が存在することが必要です。
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