交通事故により精神疾患が悪化した場合の損害賠償
1 交通事故で精神疾患を負った場合の後遺障害
交通事故の被害者となった方のなかには,事故の恐怖等のショックで,精神疾患を患ってしまう方もいらっしゃいます。
例えば,PTSD(心的外傷後ストレス障害)のように,交通事故で自分自身が死に直面したり,目の前で親しい人物が死ぬ状況を目撃などしてしまった被害者の方が,その交通事故の体験が何度もフラッシュバックしてしまい,日常生活を送ることも容易ではなくなってしまうような場合もあります。
また,事故の恐怖や事故の傷害の痛みに継続的に苦しめられることで,気分が落ち込んで抑うつ状態となりうつ病を発症する場合もあります。
このように,交通事故がきっかけで精神疾患を発症した事案について,自賠責保険の後遺障害認定制度では,非器質性精神障害として後遺障害の認定を行っています。
なお,「非器質性」とは脳外傷のような器質的な原因がないにもかかわらず精神疾患を発症したという意味です。
2 交通事故で精神疾患を負った場合に認定される後遺障害等級
非器質性の精神障害として後遺障害の認定が受けられる場合には,以下のとおり,症状の程度に応じて,後遺障害等級が判断されます。
9級10号 「通常の労務に服することはできるが非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」
12級相当 「通常の労務に服することはできるが非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」
14級相当 「通常の労務に服することはできるが非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」
3 すでに精神疾患を発症していた場合
それでは,すでにうつ病などの精神疾患を発症していた人が,交通事故の被害者となって,精神疾患の程度が以前より酷くなった場合にはどのように後遺障害は判断されるのでしょうか。
この場合には,まず交通事故に遭う前の精神疾患の症状の程度が自賠責保険の後遺障害等級の何級に相当する程度の症状であったかを判断し,そして,交通事故後の精神疾患の症状の程度が相当する等級を判断して,両者を比較して,例えば14級相当の精神疾患が12級相当の精神疾患に悪化したと判断された場合には,その悪化した分に対して損害賠償が認められることとなります。
このような事案を「加重障害」の事案と呼びます。
「加重障害」の事案については,逸失利益の計算等が非常に複雑になります。弁護士法人心 東京法律事務所では,皆様のご相談をお待ちしておりますので,まずは当法人までお気軽にお電話ください。
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